COHSMSガイドライン 目次(平成32年3月まで有効)

1.目的

このガイドラインは、建設事業を行う事業者が、労働者の協力の下に、店社と作業所が一体となって、「計画-実施-評価-改善」という一連の過程を定めて継続的に行う自主的な安全衛生活動を促進することにより、建設事業場における労働災害の防止を図るとともに、労働者の健康の増進及び快適な職場環境の形成の促進を図り、もって建設事業場における安全衛生水準の向上に資することを目的とする。

2.趣旨

このガイドラインは、建設事業場の安全衛生管理に関する仕組みを確立するための基本的事項を定めたものであり、労働安全衛生法の規定に基づき機械、設備、化学物質等による危険又は健康障害を防止するため建設事業を行う事業者が講ずべき具体的な措置を定めるものではない。

3.定義

このガイドラインに用いる用語の意義は、次に定めるところによる。

3.1 建設業労働安全衛生マネジメントシステム

建設業労働安全衛生マネジメントシステム(以下「システム」という。)とは、建設事業場において、次に掲げる事項を体系的かつ継続的に実施する安全衛生管理に係る一連の自主的活動に関する仕組みであって、施工管理等の建設事業の実施に係る管理と一体となって運用されるものをいう。

  1. 安全衛生に関する方針(以下「安全衛生方針」又は「工事安全衛生方針」という。)の表明
  2. 危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置
  3. 安全衛生に関する目標(以下「安全衛生目標」又は「工事安全衛生目標」という。)の設定
  4. 安全衛生に関する計画(以下「安全衛生計画」又は「工事安全衛生計画」という。)の作成、実施、評価及び改善
3.2 建設事業場

建設事業場とは、建設事業の仕事の請負契約を締結している店社とその店社において締結した請負契約に係る仕事を行う作業所を統合した組織をいう。

3.3 建設事業者

建設事業者とは、建設事業場で建設事業の仕事を行う者をいう。

3.4 店社

店社とは、作業所の指導、支援及び管理業務を行う本社、支店等の組織をいう。

3.5 作業所

作業所とは、工事の施工を行う組織をいう。

3.6 システム監査

システム監査とは、システムに従って行う措置が適切に実施されているかどうかについて、安全衛生計画の期間を考慮して定期的に建設事業者が行う調査及び評価をいう。

4.適用

システムに従って行う措置は、建設事業の仕事の請負契約を締結している店社及びその店社において締結した請負契約に係る仕事を行う作業所を併せて一の単位として実施することを基本とする。

5.システムを確立するために必要な基本的事項

建設事業場におけるシステムを確立し、適切かつ継続的に実施するため、建設事業者及び作業所長は、以下の基本的事項を実施するものとする。

5.1 店社において必要な基本的事項
5.1.1 安全衛生方針の表明
  1. 建設事業者は、建設事業場における安全衛生方針を表明し、労働者及び関係請負人その他の関係者に周知させるものとする。
  2. 安全衛生方針は、建設事業場における安全衛生水準の向上を図るための安全衛生に関する基本的考え方を示すものであり、次の事項を含むものとする。
    1. 労働災害の防止を図ること。
    2. 労働者の協力の下に、安全衛生活動を実施すること。
    3. 労働安全衛生関係法令、建設事業場において定めた安全衛生に関する規程(以下「建設事業場安全衛生規程」という。)等を遵守すること。
    4. システムに従って行う措置を適切に実施すること。
5.1.2 労働者の意見の反映

建設事業者は、安全衛生目標の設定並びに安全衛生計画の作成、実施、評価及び改善に当たり、安全衛生委員会等(安全衛生委員会、安全委員会又は衛生委員会をいう。以下同じ。)の活用等労働者の意見を反映する手順を定めるとともに、この手順に基づき、労働者の意見を反映するものとする。

5.1.3 システム体制の整備

建設事業者は、建設事業場におけるシステムに従って行う措置を適切に実施する体制を整備するため、次の事項を行うものとする。

  1. 建設事業場においてその事業を統括管理する者を、システム管理の最高責任者として指名し、役割、責任及び権限を定めること。
  2. システム各級管理者(店社においては、安全衛生管理部門、工事管理部門等における部長・課長・係長等の管理者、また、作業所においては、作業所長、工事主任等の管理者であって、システムを担当するものをいう。以下同じ。)を指名し、役割、責任及び権限を定めること。
  3. システム管理の最高責任者、システム各級管理者の役割、責任及び権限を、労働者及び関係請負人その他の関係者に周知させること。
  4. システムに係る人材及び予算を確保するように努めること。
  5. システムに従って行う措置の実施に当たり、安全衛生委員会等を活用すること。
5.1.4 システム教育の実施

建設事業者は、労働者に対してシステムに関する教育を実施する手順を定めるとともに、この手順に基づき、システムに関する教育を実施するものとする。

5.1.5 関係請負人の安全衛生管理能力等の評価
  1. 建設事業者は、安全衛生に関して優良な関係請負人の選定及び育成のため、関係請負人の安全衛生管理能力等を評価する手順を定めるとともに、この手順に基づき、関係請負人の安全衛生管理能力等を評価するものとする。
  2. 建設事業者は、1.において評価した結果を、次の施工する工事における関係請負人の選定及び育成に反映するものとする。
5.1.6 明文化
  1. 建設事業者は、次の事項を文書により定めるものとする。
    1. 安全衛生方針
    2. システム管理の最高責任者及びシステム各級管理者の役割、責任及び権限
    3. 安全衛生目標
    4. 安全衛生計画
    5. 次に掲げる店社において必要な基本的事項に関する手順
      1. 労働者の意見の反映
      2. システム教育
      3. 関係請負人の安全衛生管理能力等の評価
      4. 文書の管理
      5. 危険性又は有害性等の調査及び実施事項の決定
      6. 安全衛生計画の実施等
      7. 日常的な点検、改善等
      8. 労働災害発生原因の調査等
      9. システム監査
    6. 次に掲げる作業所において必要な基本的事項に関する手順
      1. 労働者等の意見の反映
      2. 関係請負人の安全衛生管理能力等の評価
      3. 文書の管理
      4. 記録
      5. 危険性又は有害性等の調査及び実施事項の決定
      6. 工事安全衛生計画の実施等
      7. 日常的な点検、改善等
      8. 労働災害発生原因の調査等
  2. 建設事業者は、1.の文書を管理する手順を定めるとともに、この手順に基づき、これらの文書を管理するものとする。
5.1.7 記録

建設事業者は、安全衛生計画の実施状況、システム監査の結果等システムに従って行う措置の実施に関し必要な事項を記録し、これらの記録を保管するものとする。

5.1.8 危険性又は有害性等の調査及び実施事項の決定
  1. 建設事業者は、労働安全衛生法第28条の2第2項に基づく「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」に従って工事に伴う危険性又は有害性等を調査する手順を定めるとともに、この手順に基づき、危険性又は有害性等を調査するものとする。
  2. 建設事業者は、1)の調査の結果に基づき労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置を決定する手順を定めるとともに、この手順に基づき、実施する措置を決定するものとする。
  3. 建設事業者は、労働安全衛生関係法令、建設事業場安全衛生規程等に基づき実施すべき事項を決定する手順を定めるとともに、この手順に基づき、実施する措置を決定するものとする。
5.1.9 安全衛生目標の設定

建設事業者は、安全衛生方針に基づき、次に掲げる事項を踏まえ、安全衛生目標を設定し、この目標において一定期間に達成すべき到達点を明らかとするとともに、この目標を労働者及び関係請負人その他の関係者に周知するものとする。

  1. 危険性又は有害性等の調査結果
  2. 過去の安全衛生目標の達成状況、労働災害の発生状況
5.1.10 安全衛生計画の作成
  1. 建設事業者は、安全衛生目標を達成するため、建設事業場における危険性又は有害性等の調査の結果等に基づき、一定の期間を限り、安全衛生計画を作成するとともに、この計画を労働者及び関係請負人その他の関係者に周知するものとする。
  2. 安全衛生計画は、安全衛生目標を達成するため、具体的な実施事項、日程等について定めるものであり、次の事項を含むものとする。
    1. 5.1.8 2.、3.の規定により決定された措置の内容及び実施時期に関する事項
    2. 安全衛生に関する行事、安全施工サイクル活動等の日常的な安全衛生活動の実施に関する事項
    3. 安全衛生教育の内容及び実施時期に関する事項
    4. 関係請負人に対する措置の内容及び実施時期に関する事項
    5. 作業所の指導及び支援に関する事項
    6. 安全衛生計画の期間に関する事項
    7. 安全衛生計画の見直しに関する事項
5.1.11 安全衛生計画の実施等

建設事業者は、安全衛生方針に基づき、次に掲げる事項を踏まえ、安全衛生目標を設定し、この目標において一定期間に達成すべき到達点を明らかとするとともに、この目標を労働者及び関係請負人その他の関係者に周知するものとする。

  1. 建設事業者は、安全衛生計画を適切かつ継続的に実施する手順を定めるとともに、この手順に基づき、安全衛生計画を適切かつ継続的に実施するものとする。
  2. 建設事業者は、安全衛生計画を適切かつ継続的に実施するために必要な事項について労働者及び関係請負人その他の関係者に周知させる手順を定めるとともに、この手順に基づき、安全衛生計画を適切かつ継続的に実施するために必要な事項をこれらの者に周知させるものとする。
5.1.12 緊急事態への対応

建設事業者は、あらかじめ、工事において労働災害発生の急迫した危険がある状態(以下「緊急事態」という。)が発生した場合に労働災害を防止するための措置を定めるとともに、これに基づき適切に対応するものとする。

5.1.13 日常的な点検、改善等
  1. 建設事業者は、安全衛生計画の実施状況等の日常的な点検及び改善を実施する手順を定めるとともに、この手順に基づき、安全衛生計画の実施状況等の日常的な点検及び改善を実施するものとする。
  2. 建設事業者は、次回の安全衛生計画を作成するに当たり、1.の日常的な点検及び改善の結果を反映するものとする。
5.1.14 労働災害発生原因の調査等
  1. 建設事業者は、労働災害、事故等が発生した場合におけるこれらの原因の調査並びに問題点の把握及び改善を実施する手順を定めるとともに、労働災害、事故等が発生した場合には、この手順に基づき、これらの原因の調査並びに問題点の把握及び改善を実施するものとする。
  2. 建設事業者は、次回の安全衛生計画を作成するに当たり、1.の労働災害、事故等の原因の調査並びに問題点の把握及び改善の結果を反映するものとする。
5.1.15 システム監査
  1. 建設事業者は、定期的なシステム監査の計画を作成し、5.1.1から5.1.14まで及び5.2.1から5.2.13までに規定する事項についてシステム監査を適切に実施する手順を定めるとともに、この手順に基づき、システム監査を適切に実施するものとする。
  2. 建設事業者は、1.のシステム監査の結果、必要があると認めるときは、システムに従って行う措置の実施について改善を行うものとする。
5.1.16 システムの見直し

建設事業者は、5.1.15 1.のシステム監査の結果を踏まえ、定期的に、システムの妥当性及び有効性を確保するため、安全衛生方針の見直し、このガイドラインに基づき定められた手順の見直し等システムの全般的な見直しを行うものとする。

5.2 作業所において必要な基本的事項
5.2.1 工事安全衛生方針の表明
  1. 作業所長は、工事安全衛生方針を表明し、施工する工事に関係する労働者及び関係請負人その他の関係者に周知させるものとする。
  2. 工事安全衛生方針は、作業所における安全衛生を確保するための施工する工事の安全衛生に関する基本的考え方を示すものであり、施工する工事の特性、建設事業者が定めた安全衛生方針、安全衛生目標、安全衛生計画等に基づくものとする。
5.2.2 労働者等の意見の反映

作業所長は、工事安全衛生目標の設定並びに工事安全衛生計画の作成、実施、評価及び改善に当たり、5.1.6 1. ⅵで定める手順に基づき、施工する工事に関係する労働者の意見を反映するとともに、関係請負人の意見を反映するよう努めるものとする。

5.2.3 システム体制の周知等
  1. 作業所長は、システム各級管理者の役割、責任及び権限を、労働者及び関係請負人その他の関係者に周知させるものとする。
  2. 作業所長は、システムに関する体制図等によりシステム各級管理者の指名を明確にさせるものとする。
5.2.4 関係請負人の安全衛生管理能力等の評価

作業所長は、安全衛生に関して優良な関係請負人の選定及び育成のため、5.1.6 1. ⅵで定める手順に基づき、関係請負人の安全衛生管理能力等の評価を実施し、この結果を建設事業者に報告するものとする。

5.2.5 明文化
  1. 作業所長は、5.1.6 1. ⅵで定める手順に基づき、次の事項を文書により定めるとともに、これらの文書を管理するものとする。
    1. 工事安全衛生方針
    2. 工事安全衛生目標
    3. 工事安全衛生計画
  2. 作業所長は、5.1.6 1. ⅵで定める手順に基づき、1)の文書を建設事業者に報告するものとする。
5.2.6 記録
  1. 作業所長は、5.1.6 1. ⅵで定める手順に基づき、工事安全衛生計画の実施状況、日常的な点検、改善の状況等システムに従って行う措置の実施に関し必要な事項を記録するとともに、これらの記録を保管するものとする。
  2. 作業所長は、5.1.6 1. ⅵで定める手順に基づき、1.の記録を建設事業者に報告するものとする。
5.2.7 危険性又は有害性等の調査及び実施事項の決定
  1. 作業所長は、労働安全衛生法第28条の2第2項に基づく「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」に従って5.1.6 1. ⅵで定める手順に基づき、施工する工事において予想される危険性又は有害性等を調査するものとする。
  2. 作業所長は、5.1.6 1. ⅵで定める手順に基づき、1)の調査の結果から労働者の危険又は健康障害を防止するために実施する措置を決定するものとする。
  3. 作業所長は、5.1.6 1. ⅵで定める手順に基づき、労働安全衛生関係法令、建設事業場安全衛生規程等から実施する措置を決定するものとする。
5.2.8 工事安全衛生目標の設定

作業所長は、工事安全衛生方針に基づき、次に掲げる事項を踏まえ、工事安全衛生目標を設定し、この目標において施工する工事期間又は一定期間において、達成すべき到達点を明らかとするとともに、この目標を施工する工事に関係する労働者及び関係請負人その他の関係者に周知するものとする。

  1. 危険性又は有害性等の調査結果
  2. 過去の工事安全衛生目標の達成状況、労働災害の発生状況
5.2.9 工事安全衛生計画の作成
  1. 作業所長は、工事安全衛生目標を達成するため、施工する工事において予想される危険性又は有害性等の調査の結果等に基づき、施工する工事期間又は一定期間における工事安全衛生計画を作成するとともに、この計画を施工する工事に関係する労働者及び関係請負人その他の関係者に周知するものとする。
  2. 工事安全衛生計画は、工事安全衛生目標を達成するため、次の事項を含むものとする。
    1. 5.2.7 2.、3.の規定により決定された措置の内容及び実施時期に関する事項
    2. 安全衛生に関する行事、安全施工サイクル活動等の日常的な安全衛生活動の実施に関する事項
    3. 安全衛生教育の内容及び実施時期に関する事項
    4. 関係請負人に対する措置の内容及び実施時期に関する事項
    5. 工事安全衛生計画の期間に関する事項
    6. 工事安全衛生計画の見直しに関する事項
5.2.10 工事安全衛生計画の実施等
  1. 作業所長は、5.1.6 1. ⅵで定める手順に基づき、工事安全衛生計画を適切かつ継続的に実施するものとする。
  2. 作業所長は、5.1.6 1. ⅵで定める手順に基づき、工事安全衛生計画を適切かつ継続的に実施するために必要な事項について施工する工事に関係する労働者及び関係請負人その他の関係者に周知させるものとする。
5.2.11 緊急事態への対応

作業所長は、あらかじめ、施工する工事において緊急事態が生ずる可能性を評価し、5.1.12で定める措置に従って、適切に対応するものとする。

5.2.12 日常的な点検、改善等
  1. 作業所長は、5.1.6 1. ⅵで定める手順に基づき、工事安全衛生計画の実施状況等の日常的な点検及び改善を実施するものとする。
  2. 作業所長は、一定期間における工事安全衛生計画を作成している場合にあっては、1.の日常的な点検及び改善の結果を、次回の工事安全衛生計画に反映するものとする。
5.2.13 労働災害発生原因の調査等
  1. 作業所長は、労働災害、事故等が発生した場合に5.1.6 1) (6)で定める手順に基づき、労働災害、事故等の原因の調査並びに問題点の把握及び改善を実施するものとする。
  2. 作業所長は、一定期間における工事安全衛生計画を作成している場合にあっては、1)の労働災害、事故等の原因の調査並びに問題点の把握及び改善の結果を、次回の工事安全衛生計画に反映するものとする。

沿革
平成11年11月16日制定
平成18年 6月 1日改正

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