令和5年度 顕彰作品紹介

建設業の安全衛生にかかる優秀な発明・考案等として令和5年度に顕彰された作品をご紹介させていただきます。

人と機械の協調安全を用いた高所作業車の安全性向上

大和ハウス工業株式会社 安全部 森 朋仁

開発の背景

建設現場や土木工事などでは、自走式の高所作業車が数多く使用されている。作業床の上昇時に操作者が梁など上部の固定構造物の存在に気付かずに、手すり等との間に、手や頭や体を挟まれる死亡・重篤災害が発生している(図1・図2)。高所作業車には、制動装置(足踏み式ネガティブブレーキ、以下「フットペダル」という。)が装着されている。

高所作業車は作業床を上昇させ、1人で作業することが多く、様子は下から見えず危険性が高い。他社から後付け安全装置が提供されているが、音や光で知らせる警報型が多く、停止機能がない。装置はポール等を使用し頭上より高い位置に設置するものが多い。設備工事等ではポール等が邪魔になり作業性の低下も報告されている。作業性を犠牲にせず、既存より検知範囲が広く、操作者の意識が低い状態でも停止する安全装置が、災害防止に必要と判断した。

作品の特徴

作業床上昇時に操作者の意図とは無関係に、既存物への接近を判断した際は、警告の意味で自動停止し、再操作で必要な高さまで上昇可能な後付けの安全装置を開発した。この安全装置は、スリーポジションイネーブルスイッチ、センサ、ソフトウェアの3つの要素から構成されており、個々の長所と短所を補完するように設計されている。スリーポジションイネーブルスイッチ「以下3Pイネーブル」(図3)とは、「強く押しても離しても停止」するスイッチである。非常事態において人間は、物を離すか強く握るという行動特性があり、それを利用したものである。

上昇時に挟まれフットペダルで停止動作が対応できない場合でも、(人は上から挟まれた時、反対方向への動作、つまり足を持ち上げることは難しい)。3Pイネーブルで停止する。(図4)

センサは操作者の頭上を常に監視し、検知範囲は既存品より2倍から10倍以上ある。より広範囲検知が必要な場合は、複数センサにも対応可能である。ソフトウェアは操作者の行動特性や建築土木現場の特性に対応するように設計されており、誤検知対策や意図的な無効化防止対策も複数組み込まれている。(図5・図6)

効果

装着前と装着後に関係者へアンケートを実施した。結果どんな状況でも緊急停止できると感じる人が増え、突然の傷病等で意識を失い操作レバー側に倒れ込んでも停止する安心感も増えウエルビーイングが向上した。効果の有効性が認められIGSAP SAFETY2.0に適合した。

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