建設業の安全衛生にかかる優秀な発明・考案等として令和6年度に顕彰された作品をご紹介させていただきます。
建設現場におけるクレーンを用いた揚重作業では、吊り荷の落下や挟まれのような危険が伴い、過去にも多くの災害が発生している。特に近年では吊り荷の落下災害が増加傾向にある。これを防ぐために、建設現場では、玉掛け3・3・3運動(地切り30cmで3秒間停止し、3m離れて巻き上げる)という安全活動を実施している。また、タワークレーンの運転席から操作してフック付近に取り付けた警報装置を鳴らすなどの安全対策を実施しているが、タワークレーンのオペレーターが警報を鳴らしているため、オペレーターの死角になる範囲では警報を鳴らせず、災害発生のリスクが存在する。対策として、揚重作業専用の監視人を配置し、吊荷直下の人払いを実施する場合や、玉掛け者が揚重巻上時に、ホイッスルを鳴らして注意喚起を実施するなど様々な対策を講じている作業所もあるが、未だ揚重災害はなくなっていない。そのため、機械的に吊荷直下侵入者防止対策を講じる必要があった。
そこで、クレーンのフックにカメラを設置し、AIによる画像認識技術を用いて人を認識してセンサー検知エリア内の人に対してアラート通知するAIスコープ(アイスコープ)を開発した。
この製品の特長として4つの機能がある。
クレーンに関する警報装置は一般的に運転席のフットペダルや玉掛け者が持つリモコンからクレーンフックにある警報装置を鳴らすのが一般的であるため、人によって警報を鳴らす頻度やタイミングが異なり統一性がなかった。さらに、クレーンのオペレーターがフットペダルで警報を鳴らす場合、運転操作を行いながらになるため、クレーンの運転に専念できていない。しかし、AIスコープは吊荷の直下に人が入って来た場合のみ、自動で警報を発報するので、クレーンのオペレーターも運転に専念することができる。
また、一般的な警報装置を手動で鳴らす場合、吊り荷の位置と関係なく警報を鳴らすことが多く、作業員が音に慣れてしまい警報が鳴っていても、人が退避しない状況になってしまうこともあるが、AIスコープは吊荷直下に人が入って来た時に警報を鳴らすので、警報に慣れることがなく、音が鳴ったら退避する環境を構築することができる。