建設業の安全衛生にかかる優秀な発明・考案等として令和6年度に顕彰された作品をご紹介させていただきます。
厚生労働省の統計「建設業における挟まれ・切れ等による傷病部位」によると、傷病の約64%が手指に集中しており、当社においても指の挟み込み等の作業災害は例年発生している。この"指"に関わる災害は、主に不注意などのヒューマンエラーに起因していることから、注意喚起等のソフト対策だけでなく、安全保護具の充実等のハード対策も必要となっている。
しかしながら、手・指の安全保護具である一般的な作業用手袋には、指全体を挟み込みから保護する機能を持った製品が存在しておらず、存在したとしても指先のみを防護したものであった。また、防護性能を向上させると指先の感覚が低下するため、指全体への防護範囲の拡大と作業性能の両立が大きな課題となっていた。
ヘルメット、フルハーネス、安全靴に次ぐ"第四の安全保護具®"として、手指全体を挟み込み等の圧力から守る防護性能と指先の作業性能を兼ね備えた"耐圧グローブ「PRESS GUARD」(プレスガード)"を開発した。
1. 全体構造
耐圧グローブは、指を保護するための防護プレートを固定したインナーと、プレートが指に沿うようにインナーを被覆するとともに、作業時に資機材に直接触れるアウターの2重構造とした。インナーとアウターは、マジックテープで留めることより、長期使用によりアウターが損耗した場合、アウターのみの交換を可能にするなど経済性についても考慮した。
2. 防護プレートの構造【特許技術】
防護プレート(14枚/片手)は指の関節位置に対応するよう3分割した金属平板とし、防護プレート同士を連結せず、各々を手袋に固定することとした。
このプレート構造を採用することにより、指全体を挟み込み圧力から守る防護性能と、指の複雑な挙動への追従性を確保することによる作業性能との両立を達成した。
3. 防護プレートの材質と強度
防護プレートの材質については、調達が容易で経済性・加工性に優れる"鉄"を採用し、プレートの表面には、高温による炭窒化物の化合物層を生成させるガス軟窒化処理を施すことにより、0.6mmと薄く軽量なプレートの靭性を向上させるとともに防食性能を付与した。
強度については、耐圧試験を実施した結果、プレート変形時(指に大きな荷重が掛からない状態)における最大荷重は静圧で約4kN(約400kg)となり、人力で取り扱う資機材重量であれば充分な耐圧性能を発揮できることを確認した。
4. 手袋(アウター)の生地
現場で使用される作業用手袋は、金属等の硬い資機材と触れる機会が多いため、アウター生地の耐久性は特に重要となる。そこで、"エンボス入りシリコーンレザー"を開発することにより、摩耗が激しい部位の耐摩耗性向上と手袋全体の柔軟性及びノンスリップ性を実現した。
「PRESS GUARD」(プレスガード)は、"圧力に耐える"これまでにない作業用手袋であり、現場での様々な安全対策やルール整備に加えて、本手袋を着用することにより、"作業員の安全確保"と"労働災害損失コストの低減"に寄与することが可能である。