建災防では、建設現場におけるメンタルヘルスと職場環境改善対策として「建災防方式健康KYと無記名ストレスチェック」の普及に取り組んでいます。
「建災防方式健康KYと無記名ストレスチェック」とは、建設現場の安全施工サイクルに組み込んで実施する次の2つの取組みをいいます。
健康KYは、KY活動において睡眠、食欲、体調に関する3つの問いかけを職長から各作業員に毎日繰り返し行い、日々の体調の変化を把握する取組みです。
無記名ストレスチェックは、安全朝礼等、現場に従事する元請社員、作業員全員が集合する場で一斉に実施するもので、その分析結果を踏まえて、より働きやすい職場環境を実現するための取組みで、工期内に複数回実施します。
「建災防方式健康KYと無記名ストレスチェック」は、建設現場の統括管理体制の中で実施する自主的な取組みです。
第2-5
(2)建設工事従事者の安全及び健康に関する意識の啓発にかかる自主的な取組の促進
・・・各建設工事の現場において、建設工事従事者のメンタルヘルス対策や熱中症対策等、心身の健康を確保するための自主的な取組を促進するとともに、建設工事従事者が利活用できる健康相談窓口について、現場レベルでの周知と利活用促進を図る。
建設労働者の多くが就労する場は建設現場であり、精神障害発症にかかる労災補償状況をみると、建設現場従事者が被災労働者となった事例が多く見られます。こうしたことを踏まえると、その働く場である建設現場においてストレスへの対処を現場単位で行うことが効果的であると考えられます。
例えば、ついうっかりといった不安全行動が招く労災事故の背景には、少なからず不眠・疲労等の因子が関連しているケースがあります。慢性的な睡眠不足や高ストレスの状態が続くと、体内のホルモンバランスが崩れ、脳血流が低下し認知機能に影響を与えることが知られております。「不安全行動」防止の観点からもメンタルヘルスの視点を取り入れることが大切です。
建災防では、これまで建設業の労働災害ゼロを目指した様々な活動に取り組んできました。昨今、社会問題となった過労死・過労自殺事案に端を発する過重労働対策・働き方改革の社会的ニーズに応えるためには、従来の取組みに加え、建設工事従事者の「心身の健康」に着目した新たな取組みが必要であると考えます。
このため、メンタルヘルス対策を、法的に事業者に求められるものにとどまらず、建設現場での自主的な取組みも併せて進めることによって、精神面からの不安全行動の防止等、真に実効性のある労災ゼロ活動へと進化させ、広く建設業に従事する人々にとって、安全・安心で快適な職場環境の形成に寄与したいと考えます。
上記様式(図1~図4)は、こちらのパンフレット(PDF)で拡大版をご覧いただけます。
無記名ストレスチェックの集団分析結果(図1・2)と事前に作業所長及び職長から回答を得た職場環境改善チェックリスト(図3)の結果を、職場環境改善シート(RA方式)(図4)に反映させながら、職場環境改善の具体的な取組みを選定します。ここで用いるシートは、建設工事従事者に浸透しているリスクアセスメント手法を取り入れて作成されたもので、ストレス判定図によって測定される4つのストレス要因(仕事の量的負担、仕事のコントロール、上司及び同僚の支援)と関連のある30のチェック項目について「該当の程度」及び「影響度」の観点からリスク評価を行い、リスク得点の高いチェック項目の優先度に従って改善策(リスク低減措置)を決定するものです。
なお、詳しい職場環境改善シートの作成方法等については、「建設現場の職場環境改善マニュアル」をご参照ください。
職場環境改善シート(RA方式)の作成結果に沿って、現場で改善策(リスク低減措置)を講じます。
職場環境改善計画の終結時に、再度無記名ストレスチェックを実施し、当該取組みの評価を行い、次の新たな取組みへと繋げていきます(PDCAサイクル)。